システマは「ロシアの合気道」とも呼ばれる人気かつ有名な武術。
始まりこそ、戦場で生き延びることを目的とした戦闘術であり制圧術でもありました。
しかし現在では「日常で起こりうる身近な驚異」に対しても有効な技術として幅広く活用されているんですね。
- システマに興味がある
- システマのことをもっとよく知りたい
- 格闘技に活かせるの?
という方に向け、システマの技術やトレーニングなどを書きました。
この記事を書くにあたって参考にした著書は以下。
ちなみに以下の記事は、福岡のシステマ道場に体験入門した際のレポートなので、併せて参考にしてみてください。
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福岡の博多にて「システマ」道場に、体験入門として練習に参加させて頂きました。 本記事はそのレポート的な内容となっており、感想や考察などを交えつつ図解・イラスト満載でまとめてみましたよ。 システマに興味 ...
最強の格闘技と言われる「システマ」とは
システマを創始したのはミハイル・リャブコという、旧ソビエト連邦で目覚ましい戦績を収めた元兵士です。
ミハイル・リャブコ氏は代々戦士の家系に生まれ、戦場での立ち振舞を家族に叩き込まれて育ったのです。
やがて輝かしい戦果をあげ、その実戦技術を体系化してシステマが誕生したんですね。
ポイント
ソ連が崩壊した当時、国家機密とされていた殺人技術の数々が明るみに出ました。
時を同じくしてシステマも知れ渡っていったのです。
なお、ミハイル・リャブコ氏と共にシステマの普及に大きく貢献したと言われたのがヴラデミア・ヴァシリエフ氏。
出典:「システマを極めるストライク!」ヴラディミア・ヴァシリエフ/スコット・メレディス
制圧している側がヴラデミア・ヴァシリエフ氏です。
創始メンバーであり、ミハイル・リャブコ氏の第一高弟でもあるシステマの達人なんです。
ちなみに、先述した本の著者のひとりが彼でもあります。
ロシア国外で初めてシステマの道場が設立されたのが1993年。
そこから爆発的にアメリカやヨーロッパ各地に広まっていきました。
07年にはニューヨークにある国連本部で開催された平和式典で「最も人間的な武道である」と評されています。
出典:「ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング」北川貴英
システマの特徴
システマは格闘技、護身術、そして殺人術としても優れた技術と言われています。
しかし昨今では、呼吸法をベースとした心身のリラックス法としても有名なんです。
ポイント
人はパニックに陥ると必要以上に恐怖や痛みを感じやすくなるんですね。
それにより、本来はできるはずの動きができなくなったりします。
そこで呼吸を整えることによって自身をコントロールし、最善の動きができるよう働きかけるのがシステマなんです。
格闘技で特にありがちな生活サイクルが、勝つためだけにめちゃくちゃトレーニングし、試合が終わると同時に自堕落(じだらく)になるというもの。
ある一時期だけ強さを維持できたとしても「日常に活かせるかどうか」という観点ではあまり意味を成しません。
「一生強くあるべき」とされるのが武術全般の概念でありますが、それはシステマにも共通することなのですね。
日本のシステマ第一人者【北川貴英】
日本でシステマと言ったら北川貴英さんの名前が必ず上がります。
システマ東京代表の方で、システマの研究や普及活動に従事されているんですね。
システマ創始者であるミハイル・リャブコ氏より、直に公認インストラクターに認定された実力者の方です。
システマを使いこなす芸人?
システマ芸人などと呼ばれて最近人気なのが、みなみかわさんという方。
かつては松竹芸能で活躍していたピーマンスタンダードというコンビでやっていました。
朝倉未来や武尊など、人気格闘家とYoutubeでコラボしたりで話題になっています。
システマの技やトレーニング法を紹介・考察
この項では、冒頭に紹介したヴラディミア・ヴァシリエフ氏の著書を参考に、システマに存在するいくつかの技術やトレーニングを紹介・考察しています。
システマの呼吸法
システマといえば呼吸法が最も大事と言われます。
興味深かったのは、打撃を打つ際の呼吸。
通常はパンチを打つ時に息を吐くと言われますが、システマだと逆に吸う場合もあるそうです。
更に一定のペースで呼吸するだけでなく、細かく呼吸を分割することも。
ひとつの行動の中に何十回も呼吸をすることもあるんです。
例えばランニングする際は一定のリズムで走るので、自分で呼吸をコントロールできます。
しかし実戦において、敵は決まった動きをしてくれませんよね。
だから普段から様々なリズムの呼吸をすることで、動きにもバリエーションを持たせることができるのです。
CDI空間
CDI空間とはシステマにおいて、相手との距離の概念のことを言います。
- 快感( Comfort)
- 不快感( Discomfort)
- 衝突( Impact)
格闘技でも日常にしても、相手との距離にはこの3つの概念が常に存在します。
相手の攻撃がこちらに届く間合い、それは自分にとって不快感( Discomfort)や衝突( Impact)の距離になりえるわけです。
出典:「システマを極めるストライク!」ヴラディミア・ヴァシリエフ/スコット・メレディス
相手にとっては、気づいた時には既に遅し・・・というわけなんですね。
これはあらゆる武術に共通する概念であると思います。
こっちが敵意を見せれば相手は警戒する。攻撃をすれば身を護る。
だからいかに攻め気を感じさせないかが重要となるわけです。
達人の考え方に触れた私の体験談
以前、沖縄空手に精通する方にお話を伺ったとき、こうおっしゃってました。
格闘技の試合みたいに両手を上げて構えていたら「これから攻撃しまーす」と言って相手に警戒させているようなものだよ。
つまり自分から構えをとり、あえて相手を警戒させているのは、武術的に言えば滑稽(こっけい)だということです。
漫画や小説などでも、不動立ちや平立ちなど「構えない構え」をとる達人キャラクターがいますよね。
実際、構えを突き詰めるとその境地にたどり着くのかもしれません。
システマの拳立て
拳立てはシステマでも基本トレーニングのひとつとされています。
プッシュアップはシステマのエクササイズ全てを補強する基本的ツールである。拳や手を強化する以外にも色々な目的で使われる。システマに必要な属性を鍛えるために欠かせない基本的なブレスワークは、プッシュアップを通して練習できる。
出典:「システマを極めるストライク!」ヴラディミア・ヴァシリエフ/スコット・メレディス
システマ東京代表の北川貴英さんの著書やトレーニング動画でも、頻繁に拳立てが見られます。
しかしそのやり方は、空手で行うような拳立てとは違うようです。
出典:「ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング」北川貴英
何回も早いペースで上げ下げするのではなく、システマでは非常にゆっくり上げ下げする拳立てを推奨しています。
「システマを極めるストライク!」にあるヴラディミア・ヴァシリエフ氏の拳立て方法によれば、40カウントしながら下がって次の40カウントで上がるとのこと。
ゆっくりカウントしながら得られるメリットとしては「自分の一番苦痛に感じる時の体勢」が把握できるらしいです。
そのような状況に直面し、いかにして呼吸法を用いて苦痛を逃がすのか、それを体得していくのですね。
達人の異形の拳
本の中にはヴラディミア・ヴァシリエフ氏の拳の写真が載っていました。
出典:「システマを極めるストライク!」ヴラディミア・ヴァシリエフ/スコット・メレディス
拳を使ったトレーニングを重ねていくと、出っ張りが消えてフラットな拳になってくるそうです。
この拳を見て思い出したのが「人間武器化」で著名な空手家・倉本成春先生。
あの方の拳も出っ張りがなく、まるでドラえもんの手のように拳全体が丸く肥大化していました。
ヴラディミア・ヴァシリエフ氏や倉本先生のレベルまでいくと別かもしれませんが、中途半端に拳を鍛えるくらいなら実践練習を重ねた方が効率良いと言えます。
いくら拳だけ強くなっても、相手に当てる能力や体捌きが向上しないと役に立ちませんからね。
ステップの練習【足の踏みっこ】
システマでは有効なステップワークを身につける練習のひとつに「足の踏みっこ」があります。
ルールは簡単で、相手の足を踏めば勝ち。
- 踏まれないようにステップを駆使して避ける
- 踏むためにフェイントやアタックを駆使する
この2つの意識が華麗なステップワークを養成するのにとても効果的なんですね。
私も、似たようなトレーニングをレスリングの練習でやったことがあります。
わりと楽しみながらできるところがまた良い点なんです。
システマとクラヴマガの違いは?
よく護身術として比較されるのがイスラエル発祥の格闘技・クラヴマガ。
私自身が直にシステマやクラヴマガを体験したわけではないのですが、調べた限りだと以下の違いがみられます。
- クラヴマガ:エクササイズ的でありスポーツ性が高い
- システマ:武術的であり健康法により近い
まずクラヴマガの場合、フィットネス目的で取り組む会員も多くいますね。
キックボクシング的なミットや、サンドッグ打ちの練習も多いんです。
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【クラヴマガとは】最強と名高い護身術(格闘技)の技術を考察・解説
※この記事には広告・プロモーションが含まれており、アフィリエイトリンクを利用しております この記事では、最強の護身術(格闘技)として名高いクラヴマガの基本的な説明や技術の考察について書いています。 映 ...
対してシステマは呼吸法、リラックス法を重視しています。
いかに脱力やリラックスによって精神的・肉体的苦痛から脱却できるのか?
このような健康法的な考え方が強いように思います。
もちろん、その技術の先には実戦的な殺人術としての側面があるのでしょう。
しかし入門者への入り口としては、柔らかいソフトなトレーニングを行う印象ですね。
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福岡のシステマ道場【体験レポート】練習内容を図解・イラストで解説
福岡の博多にて「システマ」道場に、体験入門として練習に参加させて頂きました。 本記事はそのレポート的な内容となっており、感想や考察などを交えつつ図解・イラスト満載でまとめてみましたよ。 システマに興味 ...
システマの道場について
以下の記事に、システマの教室などに関する最新の情報が掲載されているとのことです。是非、参考にされて見て下さい。
最強の格闘技・システマまとめ
- システマは戦場の技術を基に生まれた実戦技術
- 基本は呼吸法と脱力によるパニックからの脱却
- クラブマガに比べてより武術的・健康志向な部分がある
個人的な意見としては、システマは非常に説得力のある実戦技術だと感じます。
なぜなら、死線をくぐり抜けてきたミハイル・リャブコ氏やヴラディミア・ヴァシリエフ氏が、現在でもリアルタイムで研鑽(けんさん)、指導されているからです。
日本で一般的に教えられているシステマは、戦闘術というよりも「如何に日常生活に活かすか」という点に重きが置かれているように感じますね。
今回この記事を書くに当たって調べるうち、俄然(がぜん)セミナーなどに参加してみたくなりましたよ。
また、関連記事としてボクシングやMMAなどのメジャー格闘技の解説やおすすめ記事を以下で書いています。
よかったら参考にしてみてください。
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